広島には「みらい」があるじゃん

~中学生、高校生、保護者、教員の広場~

広島の高等学校(定時制・通信制)の情報を中心に発信します!



1-2 自己学習力を支える知識(メタ認知)


 足し算の筆算に取り組んでいるAさん、Bさん、Cさんがいます。
 取り組んでいる問題は「45+38」です。
 Aさんは「73」と書いて、次の問題に移りました。
 Bさんは「73」と書いた後、一瞬、「おやっ?」という表情をしましたが、やはり次の問題に移りました。
 Cさんは「73」と書いた後、「おやっ?」と思い、もう一度見直しをしました。そして繰り上がりを忘れていたことに気づいて、「83」と書き直しました。

 3人は、最初は同じ間違いをしていました。しかし、その後の行動が違います。Aさんは間違いに気づきませんでした。Bさんは何となく、おかしいと感じましたが、そのままに終わってしまいました。Cさんは、間違いに気づいて、正しい答えを書くことができました。

 自分で自分の思考過程について、適切に判断できているかどうかについて考える力のことを「メタ認知」といいます。「メタ」とは「上位の」とか「高度の」という意味です。つまり、自分の思考、行動などを一段高いところから見ているもう一人の自分と言い換えることができるかもしれません。

 このメタ認知は、大きく次の三つの働きから成り立っています。

 1つ目は、自分の思考が正しく働いているかを、監視する働きです。これを「モニタリング」といいます。筆算の途中、Bさん、Cさんは「おやっ」と思いました。これはモニタリングがうまく機能していたということです。

 2つ目は、「モニタリング」を受けて適切な修正を加えるということです。これを「コントロール」といいます。Cさんは、次の問題に進もうとしていた手を止めて、自分の計算を見直し、「5+8で13」とつぶやき、繰り上がりの「1」をメモして、10位の「4+3」にさらに「1」を加えて、「83」としました。Bさんは「モニタリング」はできていたけれど、「コントロール」ができていなかったといえます。

 3つ目は、こうした「モニタリング」や「コントロール」の背景にある知識です。Cさんは、もしかしたら「おかしいと思ったら、すぐに計算し直すのがよい」とか「自分はあわて者だから、よく計算間違いをする」といった取り組み方や自分の特性に関する知識を持っていたのかもしれません。このような課題への取り組み方や自分の特性に関わる知識を「メタ認知的知識」といいます。

 自分で自分を見つめて、自分で自分をコントロールするメタ認知は、自律的に学習を進める上で非常に大切です。そしてメタ認知を高めることは、単に学習の場面だけではなく、日常生活の場面で、自分の考えや思いを相手に効果的に伝えたり、誰かともめたりしたときに、自分の言い分と相手の言い分のどちらが正当かを冷静になって考え、問題をよりよく解決することにもつながってきます。

 中学生や高校生のみなさんは、もう一人の自分(「メタ認知」力)をどのように育てていますか?

 そして、保護者や教員のみなさんは、我が子、生徒の「メタ認知」力をどのように育んでいますか?

◎主に参考とした本:佐藤浩一『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えたこと』北大路書房 2014年

PAGE TOP