2021(令和3)年に開催された東京オリンピックの期間中は、学生がボランティアとして参加しやすいように都内の大学は授業や試験を行わないとともに、ボランティアへの参加を単位として認める大学も出てきて話題となりました。
日本でボランティアの動きが広がるきっかけとなったのは、1995(平成7)年におきた阪神・淡路大震災です。この時、全国から大勢のボランティアが被災地に駆けつけ、それを機に多くの人が関心を持つようになったといわれます(それゆえ、この年は「ボランティア元年」ともよばれます)。
そして、1998(平成10)年4月からは、学校教育法施行規則第98条及び平成10年文部省告示第41号の規定により、高等学校において、学校外におけるボランティア活動、就業体験活動等を科目の履修とみなし、当該科目の単位を与えることが可能となりました。
2001(平成13)年には、「学校教育法」の一部が改正され、学校教育におけるボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の充実が明記され、現行の高等学校学習指導要領においても、「第1章総則 第1款高等学校教育の基本と教育課程の役割」の4において、学校においては、「地域や学校の実態等に応じて、就業やボランティアに関わる体験的な学習の指導」を適切に行い、「望ましい勤労観、職業観の育成や社会奉仕の精神」を涵養することが求められています。
本来、ボランティア活動は、自主性、主体性、無償性などのキーワードに代表される活動ですが、これらの法体系のもとで、学校教育においては、ボランティア活動は、意図的、制度的に行われるという性格も併せ持つようになっています。
生徒を取り巻く社会環境の変化の中で、生徒の社会的な体験の機会が減少していることから、学校教育におけるボランティア活動を通して、国際協力や環境保全、少子高齢社会への対応など様々な社会問題に対する生徒の問題意識を広げたり深めたりすることが大切です。
ここまでボランティア活動について説明してきましたが、この制度で単位認定できるのはもちろんボランティア活動だけではありません。高等学校学習指導要領では、次の3つが具体例としてあげられています。
①社会福祉施設等においてボランティア活動を行った場合
②企業、工場や農家等において就業体験活動を行った場合
③各種のスポーツ活動や文化に関する活動において顕著な成績をあげた場合
これら①から③の内容に該当する活動を行った場合、その成果を自校の科目の履修とみなし、単位として認めることができます。単位認定に当たっては、「各学校の判断により、その学修成果に対応する科目の一部又は全部の単位として認めることもでき、また、増加単位として認定することもできる」とされています。
ただし、これらの活動が単位として認定されるのは、「大学、高等専門学校又は専修学校等における学修の単位認定」のところ(2-4)で述べたのと同様に、修得する単位数に相当する時数、ボランティア等に参加した場合です。
また、就業体験活動についても、当たり前ですが、「いわゆるアルバイトとは区別される必要があること、就職・採用活動と直接結び付けられるべきものではないこと」などが留意事項としてあげられています。