大学や短期大学等には、地域の人に様々な学習の機会を提供することを目的に「公開講座」を実施しているところが多くあります。文部科学省が作成した2021(令和3)年7月21日 中央教育審議会大学分科会での資料(「高校生等が科目等履修生として大学の単位を履修した際の修業年限の通算について」)によると、高校生を対象として通常授業の履修機会を提供している大学は約28%、高校生の科目等履修生は約1,500人にもなります(いずれも2018(平成30)年度時点)。
広島県では、教育ネットワーク中国が中心となって、高大連携事業の一環として、広島県教育委員会・広島市教育委員会・福山市教育委員会などと協定を結んで、次ページのようにネットワーク会員の大学・短期大学の正規授業科目と高校生のために特別に企画された公開講座を高校生に提供しています。
また、教育ネットワーク中国は、広島県内だけではなく、山口県岩国地区の高等学校や岡山県立井原高等学校、笠岡高等学校とも協定を結び、高校生が大学の高度な教育・研究に触れる機会を提供するなど、高校教育と大学教育の円滑な接続に大いに貢献しています。

このような大学・短期大学の正規授業科目や公開講座を、高校生が興味・関心や将来の自分の進路を見据えて受講した場合、その学修を自分が在籍する高等学校の科目の履修とみなし、単位として認めることができる、というのがこの制度です。単位認定に当たっては、各学校の判断により、その学修成果に対応する科目の一部又は全部の単位として認めることもできるし、増加単位として認定することもできることになっています。
さらに、この制度により修得した単位は、当該大学等に進学した場合に、その大学等の卒業に必要な単位・在籍期間としてカウントされる場合もあります。従来は、修得した単位数だけでしたが、2021(令和3年)10月29日の学校教育法施行規則の一部改正により、修得した単位数に加えて、その修得に要した期間等についても勘案して修業年限の通算を行うことが可能となりました。つまり、高校在学時に大学の科目等履修生で一定以上の単位を修得しておけば、卒業を半年程度早めることも可能となります。
これまでの日本の学校教育制度は基本的に相当年齢の考え方に基づいており、一般学生よりも若年での卒業を認めることは適当ではないという考えがとられてきましたが、近年は、早期卒業制度の創設や、海外の高校を卒業した者に大学入学資格を付与する際の年齢制限(18歳以上)撤廃など、政策目的に応じて相当年齢主義の例外が認められてきており、この度の改正はこのような一連の学びの多様化という目的の実現に向けての変更といえます。
そして、この「大学、高等専門学校又は専修学校等における学修の単位認定」の制度による単位認定は、大学だけではなく、短期大学、高等専門学校、専修学校、公民館などの社会教育施設が開設する講座などの学修も含まれます。
ただし、これらの学修が単位として認められるのは、あくまで高等学校での授業と同様、修得する単位数に相当する授業時数行われる科目や講座等の場合で、数時間の授業や講座等に出席したぐらいで単位が修得できるというものではありません。
ちなみに、授業時数については、高等学校と大学では計算の仕方が異なっています。大学の1単位当たりの授業時数については、2022(令和4)年10月に施行された大学設置基準第21条において、「単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、第二十五条第一項に規定する授業の方法(筆者注:第二十五条第一項において、「授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする」とされている)に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、おおむね十五時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位として単位数を計算するものとする」とされています。
高等学校の場合は、1単位当たりの授業は35単位時間(50分×35回)と定められているのに対し、大学の場合は、15時間から45時間と幅があるのが特徴です(また、大学には、高等学校のように1単位時間=50分などの標準を定めたものもありません)。また、卒業要件についても、高等学校の場合は、74単位以上ですが、大学の場合は、大学設置基準第32条において、124単位以上と決められています。
先ほど述べたように、高校生の時に、この制度を利用して修得した単位は、当該大学等に進学し、当該大学等から認められた場合には、卒業に必要な単位の一部とすることも可能です。自分が在籍する高等学校の科目の単位として認められるだけではなく、将来進学する大学等での科目の単位としても認められるのであるから、大変お得な学修方法といえます。