グローバル化の進展で、海外へ留学する高校生は、2008(平成20)年度から2017(平成29)年度の10年間に30,342人から35,842人へと約1.2倍に増加し、このうち、3か月以上の留学については、3,208人から4,197人へと約1.3倍にもなっています。
留学にはあこがれるけれど、留学中は、在籍する高等学校での学習ができなくなるため、同級生よりも卒業が遅れてしまうのが気になるという生徒や保護者もいるかもしれません。

しかし、高等学校学習指導要領では、外国の高等学校(正規の後期中等教育機関)へ留学した場合には、「36単位を限度として我が国の高等学校の単位として認めることができる」と明記されています。第1章の「卒業に必要な要件」(1-5)でも述べたように、日本の在籍する高等学校で、毎週月曜日から金曜日まで毎日6時間授業が行われていると、年間で修得できる単位数は30単位となる(厳密には、ロングホームルームの時間は単位とはならないため、30単位を下回る場合もある)ので、1年間留学しても、留学中の学修が36単位まで認められるのであれば、留学前と留学後に日本の在籍する高等学校できちんと学習し単位認定してもらえれば、余裕で同級生と同じ3年間で卒業できる計算になります。
ただし、留学したら即36単位が認められるということではなく、このことについて、高等学校学習指導要領では、「単位認定に当たっては、外国における学習の状況を把握し、それに応じた認定を行うことが必要であり、留学した場合に一律に36単位が自動的に認められるわけではない」と注意を喚起しています。
海外におけるどのような学習が、国内のどのような教科・科目の履修に相当すると見なすかについては、各学校において判断することとされており、外国における学習のみで不足していると考えられる内容については、添削指導や補充指導等も活用しながら、適切に補うことが必要である、としています。
また、外国の高等学校は、日本と違って8月~9月入学、6月~7月卒業という制度をとっているため、学年をまたいだ場合の卒業時期はどうなるのかという不安もあるかもしれませんが、このことについても、高等学校学習指導要領では、「学年をまたがって留学した生徒については、留学が終了した時点において、学年の途中においても進級又は卒業を認めることができる」とし、長期の留学の場合でも、原級留置や休学する必要がなくなるとしています。
具体的には、高等学校1年生の9月に留学し、翌年の8月に日本の在籍する高等学校に復帰した場合、2年生として再スタートをきることができ、そのまま順調にいけば3年間で卒業できることになります。ただし、高校3年生の9月に留学した場合は、復帰するのが翌年の8月になるため、この場合は、本来卒業する年度末の3月よりは、半年遅れとなってしまいますが、さらに半年後の3月まで卒業を待たずに、年度途中でも卒業できるということになります。
なお、外国の高等学校への留学とは、いったん日本の高等学校に入学し在学関係が生じた生徒が、当該校の校長の許可を受けて一定期間外国の高等学校で学習することで、外国の高等学校等に在学していた生徒が、これまで在学関係の存在しなかった日本の高等学校との間で新たに在学関係が生じるという場合は、編入と呼ばれ、留学とは異なります。
