まず1つ目が、生徒募集にあたって、平日登校コース(定時制の課程)においては、定員を240人としていますが、生徒は入学後に、どの時間帯で学習を進めるのかを自分で決めることができるようになっていることです。
これのどこが新しいのかといえば、通常、昼間、夜間と授業が開設されている公立の定時制の課程の高等学校においては、募集段階で、昼間部と夜間部ごとに定員を設けていることが多く、入学を希望する生徒は、あらかじめ、昼間に登校して学習を進めるのか、夜間に登校して学習を進めるのかを決めて、受検(広島県の公立高等学校の入試では、「受験」ではなく「受検」という)しなければなりません。
定時制の課程の高等学校では、一般的に、昼間の受検倍率が高く、夜間の受検倍率はそれよりも低くなりがちです。例えば、昼間40人、夜間40人を募集する場合、昼間の受検倍率は1倍を超えますが、夜間の場合、受検倍率は1倍を切ってしまいます。
実際、再編対象校の1校である多部制(昼間と夜間など学ぶ時間帯を複数持っている学校のこと)の広島市立大手町商業高等学校について、2014(平成26)年度の広島県公立高等学校選抜(Ⅱ)の志願倍率をみると、午後部は2.20倍ですが、夜間部は0.85倍でした。もし、昼間の40人と夜間の40人を合わせ80人で募集すれば、より多くの生徒が入学できたかもしれませんが、募集人数を昼間・夜間と40人ずつに分けることで、夜間にはまだ定員に空きがあるにも関わらず、昼間を希望し定員の40番以内に入れなかった生徒は不合格になってしまっていました。
また、昼間の時間帯に授業がある高等学校に入学し学習していた生徒が、体調や仕事などの関係で、昼間の時間帯に登校できなくなった場合、学習を続けるために夜間の時間帯に授業がある学校へ転学しなければならないという問題もありました。
これについても、広島県の公立高等学校の場合、全日制の課程や定時制の課程からの転学は、「原則、保護者の転勤等に伴う転居等一家転住者であり、一家転住により、現在通学している高等学校(国公立・私立は問いません。)に物理的に通学できなくなった場合」(広島県教育委員会他『令和6年度用 広島県の公立高等学校へ転入学を希望する生徒・保護者の皆様へ』)という要件を満たさなければならないため、近隣の公立高等学校にかわろうとすると、元の学校を退学して、一部の単位を修得していれば編入学試験を受けるか、単位を全く修得できていなければ、新規中学校卒業者と同じ扱いで受検し直さなければならないという問題もありました。
昼間と夜間で定員を分けて、募集をすることについては、教室数や教員数の問題もあるため、やむを得ない問題かもしれませんが、広島みらい創生高等学校の平日登校コース(定時制の課程)においては、入学後に学習する時間帯を決めることができるため、このような問題は起きません。
ちなみに、広島みらい創生高等学校の平日登校コース(定時制の課程)の場合、昼間の時間帯に学習を希望する生徒がほとんどで、夜間の時間帯に学習を希望する生徒は多くありません。もし、平日登校コース(定時制の課程)の定員の240人を従来の多部制の高等学校のように昼間・夜間と半数ずつに分けて募集していたら、夜間にはまだまだ定員に空きがあるにも関わらず、昼間を希望しながら、昼間の定員内に入れずに結局入学できなかったとか、不本意ながら夜間に受検し直したという生徒が多く出ていたに違いありません。
また、入学したときは、昼間の時間帯に学習していたが、体調や仕事などの関係で、昼間に登校できなくなった場合、年度ごとではありますが、夜間に変更することも可能です。このようなことが可能となるのも、教室数や教員数が従来の1~2クラス規模の高等学校よりはスケールメリットが働き、いくらかの融通が利くためです。
