「あなたが本校を志望した理由は何ですか?」
入学試験の面接では、一般的によく面接官から聞かれる質問です。
そして、受験者からは、「私が御校を志望したのは、私の夢は〇〇で、・・(中略)・・その夢を実現するには御校で学ぶのが最もよいと考えたからです」などという答えが返ってくるのが普通です。
しかし、受験者から「私はこの高校に来たいわけではありません。」という答えが返ってきたらどうでしょう。きっと面接官は驚くに違いありません。そして、その後に「私は、本当は今の高校で、友達と一緒に卒業したい。でも、学校に行けないから・・・」と受験者が自分の思いを続けたら。
自分の希望する高等学校に入学し、入学後に新しい友達もでき、順調な高校生活がスタートしたように見えて、突如、何らかのきっかけで登校できなくなり、進級や卒業が難しくなって、せっかく入学した学校を中途退学したり、別の学校へ転学したりせざるを得ない生徒がいます。
そのようなつらい思いをしている生徒は、限られた一部の生徒なのでしょうか?
文部科学省が毎年調査している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、2023(令和5)年度の小・中学校における長期欠席者数は493,440人で、コロナ前の2018(平成30)年の240,039人から2.06倍増加しています。また、このうち不登校によるものは346,482人で、2018(平成30)年の164,528人から2.11倍増加しています。不登校児童生徒数は11年連続で増加し、過去最多となっています。
高等学校においても、令和5年度の長期欠席者数は104,814人で、前年度の122,771人からはやや減少しましたが、コロナ前の2018(平成30)年の80,752人から1.30倍増加しています。このうち不登校によるものは68,770人で、これもコロナ前の2018(平成30)年の52,723人から1.30倍増加しています。在籍生徒に占める不登校生徒の割合は2.4%となっています(2018(平成30)年は1.6%)。
我が国では、中学校卒業者の約99%が高校に進学していますが、高等学校は小・中学校と異なり義務教育ではないため、小・中学校では不登校(出席日数不足)であっても進級・卒業できたものが、高等学校では不登校(出席日数不足)が原級留置や中途退学につながるケースも出てきます。高等学校の中途退学者数は、2013(平成25)年度以降減少傾向にありましたが、2020(令和2)年度を境に増加しはじめ、2023(令和5)年度の中途退学者数は46,238人で、前年度の43,401人から増加しました。これにともない中途退学率も1.5%で前年度の1.4%から増加しています。
高等学校の不登校生徒数68,770人という数字は、生徒数1,000人当たりで見ると23.5人(2018(平成30)年度は16.3人)で、これは1学年8クラス規模(通常1クラスは40人で編成)の学校で、不登校生徒が各学年7~8人いる計算になります。また、中途退学者数46,238人という数字は、同様に1学年8クラス規模の学校(全校生徒数約1,000人)でいえば約46校分となります。
1,000人規模の高等学校に各学年7~8人の不登校生徒がいたり、1,000人規模の高等学校46校分に相当する中途退学者がいたりするという現状は、どう見ても健全な状態とは言えないと思います。
それでは、不登校となったり、中途退学したりする要因や理由は何なのでしょうか?
2023(令和5)年度の高等学校における不登校の主な要因として挙げられているのは、「学校生活に対してやる気が出ない(32.8%)」「生活リズムの不調(26.7%)」「不安・抑うつ(16.7%)」「学業不振(15.4%)」「いじめを除く友人関係をめぐる問題(11.0%)」などです(複数回答あり)。
一方、中途退学の主な理由として挙げられているのは、「進路変更(41.3%)」「学校生活・学業への不適応(34.2%)」「学業不振(6.8%)」で、これら上位3つの理由で全体の82.3%にもなります。このうち「進路変更」の内訳を見てみると、「別の高校への入学を希望(22.9%)」「就職を希望(7.4%)」「高卒程度認定試験受験を希望(2.9%)」などとなっています。
このような不登校や中途退学の要因・理由からは、学力や人間関係に不安を感じ、それが学校生活への不適応につながり、結果として不登校や中途退学となっている生徒が一定数いることが想定されます。
なお、転学については、全国的な調査データはありませんが、東京都教育委員会が毎年調査している「公立学校統計調査報告書【学校調査編】」によると、2023(令和5)年度の東京都立高等学校の生徒のうち、転学した生徒は2,433人で、転学率(在籍生徒数に対する転学者の割合)は2.0%となっており、全国の中途退学率1.5%を上回っています。
このような生徒については、学力や人間関係などの不安を少しでも軽減させることができれば、不登校や転学・中途退学のリスクを減らすことができるかもしれません。
しかし、そもそも自分の興味・関心や体調等に合わせて、自分のペースで学習を進めたり、人間関係をスムーズに進めるためのスキルを学習したりすることは、既存の高等学校の仕組みの中でできるのでしょうか?
それができていないから、既存の高等学校の仕組みの中では難しいから、不登校となったり、他の高等学校へ転学したり、中途退学という道を選択せざるを得ない生徒が後を絶たないともいえます。
学力や人間関係などの不安を持つ生徒たちを何とかサポートすることはできないか。広島みらい創生高等学校は、そのような生徒をサポートできるよう、定時制・通信制の2つの課程の仕組みを生かした新しいタイプの高等学校として、2018(平成30)年4月に広島の地に誕生しました。そして、その仕組みを生かして、これまでに多くの生徒が自分の夢の実現に向けて広島みらい創生高等学校を巣立っていきました。
このコーナーでは、広島みらい創生高等学校を例にしながら、定時制の課程、通信制の課程の魅力を紹介するとともに、高等学校の課程・学科の違い、単位認定の仕組み、卒業要件など、知っているようで実はよく分かっていない様々な高等学校の情報を発信していきます。
これらの情報が、将来の進路に悩んでいる中学生の皆さんや、現在の高等学校が自分に合っていないと感じている高校生の皆さん、そして、我が子の幸せを願い日々尽力されている保護者の皆さん、生徒の成長を応援し日々奮闘されている教員の皆さんにとって、希望に満ちた未来への扉を開くためのヒントになれば幸いです。