令和8年度の広島県の公立高等学校入学者選抜の実施内容の一つに自己表現があります。自己表現は一次選抜と二次選抜の両方で実施されます。
自己表現は、令和5年度の入学者選抜から導入されましたが、受検生の中には、何をどのように表現したらよいのかイメージがわかないという人がいるかもしれません。
ここでは、自己表現の内容・方法について、広島県教育委員会が公開している「自己表現 試行事例(サンプル)」を参考にしながら、具体的に説明していきます。
ただし、これから説明する事例は、「正解例」ではありません。評価にも関係ありません。あくまで「自分らしさ」を形にするためのヒントと考えてください。
まず、内容についてですが、自己表現で表現する内容に決まりはありません。
よく中学校の時の部活動で、自分はレギュラーでなかったから、表現できる内容がないという人がいます。本当に、補欠では自己表現の内容とならないのでしょうか?
私は、補欠として部活動に取り組んできた経験は、「目立たないけれど大切な役割を果たす力」や「悔しさを乗り越えて努力を続ける力」といった、自分の内面の成長を伝える貴重な材料になると思います。
試合に出られなくても、大きな声を出してチームの雰囲気を支えたり、記録係として責任を果たしたりした経験を言葉にまとめることで、検査官には、「この人は自分の役割を理解し、何事にも前向きに取り組める人だ」と伝わります。
自己表現は「成果」や「結果」だけが評価されるのではありません。評価の観点である「ア 自己を認識する力」や「イ 自分の人生を選択する力」からすると、「過程」や「姿勢」も評価の観点として重要になってくるのではないかと考えられます。
補欠だからこそ見える景色や感じたことを、自分の言葉で丁寧に伝えることが、むしろ深い自己理解につながるのではないかと思います。
次に表現の方法についてですが、自己表現で表現する方法は、ガイドラインに逸脱しなければ、どのような方法でも問題ありません。
「自己表現 試行事例(サンプル)」では、実物を持ち込む(バレエシューズ、プラモデル、小説など)、タブレットを使う、実演する(ダンスの披露、ベースの演奏)などが例としてあげられています。
ここにあげられている方法以外で、準備のハードルが低く、工夫次第で深い表現ができるものに紙芝居があります。
紙芝居は、視覚的に分かりやすく、検査官に伝えたいことが伝わりやすくなるだけでなく、話す側の構成力や表現力を高める効果もあります。タブレットに比べて画面の反射や操作の手間がなく、紙ならではの温かみや手作り感が伝わることで、話し手の個性がより鮮明になります。絵を順にめくりながら話すことで、話の流れが整理され、聞き手の集中力も保ちやすくなります。
さらに、紙芝居を自作する過程そのものが、準備力や構成力の向上につながります。絵を描く、順番を考える、話す内容を整理する―これらの作業を通じて、自己理解が深まり、伝える力も磨かれます。紙芝居は単なる道具ではなく、自分の思いや考えを形にする手段として、自己表現の質を高める大きな助けになります。
例えば、先ほどの部活動での経験を芝居形式で表現すると次のようになります。
1枚目:「補欠としてのスタート」
2枚目:「仲間を支える工夫や練習への取り組み」
3枚目:「自分なりに得た達成感や気づき」
4枚目:「これからの高校生活で生かしていきたいこと」
このような構成にすることで、「ア 自己を認識する力」や「イ 自分の人生を選択する力」をしっかり表現できます。また、それぞれの場面でどのような素材(イラスト、写真など)を持ってくるかで、「ウ 表現する力」もアピールできます。
このように、紙芝居は、「自分らしさ」の魅力を引き出し、検査官に印象深く伝えるための効果的な方法の一つといえます。
<参考:こんなテーマも紙芝居にできる!>
〇「将来は保育士になりたい」という夢をテーマにした事例
紙芝居の1枚目に「きっかけとなった保育園での体験」、2枚目に「子どもと関わる中で感じたやりがい」、3枚目に「保育士として目指したい姿」を描き、それぞれの場面に合わせて自分の考えや気持ちを言葉で補足することで、夢への思いを具体的に伝えることができます。このように、絵と話を組み合わせることで、聞き手の理解を助けるだけでなく、自分自身の価値観や進路選択の根拠を明確に示すことができます。
〇「興味のあること」として「地域の歴史」に関心がある場合
紙芝居に地元の史跡や伝承を描きながら、それにまつわる自分の調べ学習や体験を紹介することで、単なる知識の披露ではなく、自分なりの視点や探究の姿勢を伝えることができます。こうした工夫は、「ア 自己を認識する力」に加えて、「イ 自分の人生を選択する力」にもつながり、将来どのように地域と関わっていきたいかという展望を語るきっかけにもなります。



※注:自己表現については、令和8年度の詳細はまだ公表されていないため、令和7年度の情報をもとに説明しています。(「自己表現 試行事例(サンプル)」も同様)
※令和8年度公立高等学校入学者選抜にかかる広島県教育委員会のHPはこちらからどうぞ
前のページ(入学者選抜情報 12 広島県公立高等学校入学者選抜 自己表現の内容・方法 -基礎編-)はこちらからどうぞ
