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5-3 通信制の課程での学習


◇教育方法

 ここでは、通信制の課程の教育方法について説明します。

 通信制の課程の教育方法は添削てんさく指導、面接指導、放送その他の多様なメディアを利用した指導、試験によることになっているため(高等学校通信教育規程第2条)、全日制・定時制の課程における授業は原則として行われません。

 通信制の課程において、全日制・定時制の課程における授業に相当するものが、添削指導と面接指導です。高等学校学習指導要領では、添削指導、面接指導を「通信制の課程における教育の基幹きかん的な部分」と位置付け、年間指導計画に基づき、計画的に実施することが必要であるとしています。

 このうち、添削指導とは、学校から出された添削課題を、教科書などをもとに自宅で学習し、それを郵送したり、学校へ持参したりすることで添削指導を受けることで、学校によっては、添削課題をレポートという言い方をしているところもあります。

 また、面接指導とは、実際に学校に登校し、先生から対面で指導を受けることで、これも学校によってはスクーリングという言い方をしているところもあります。

 高等学校学習指導要領では、各教科・科目の1単位当たりの添削指導の回数、面接指導の単位時間数(1単位時間は、50分として計算)の標準が、次のように示されています。

 この表によると、例えば、国語に属する科目1単位を修得するためには、年間3回の添削指導と1単位時間(例えば50分×1回)の面接指導を受け、体育1単位であれば、年間1回の添削指導と5単位時間(例えば50分×5回)の面接指導を受ければよいということになります。

 ただし、この表に示された各教科・科目の1単位当たりの添削指導の回数、面接指導の単位時間数は、あくまで標準であり、学校ごとに柔軟に具体的な回数、単位時間数を決めることができることになっています。

 しかし、通信制の課程の学習の量と質は全日制・定時制の課程の学習の量と質と同等であり、この表に定められた添削指導の回数及び面接指導の単位時間数は、全日制・定時制の課程の学習量に相当するように定められているため、通常、どの通信制の課程の高等学校においても、各教科・科目の1単位当たりの添削指導の回数、面接指導の単位時間数は、この表に定められた標準どおり(あるいはそれ以上)に設定されていることが多いといえます。

 なお、この表にない学校設定教科に関する科目のうち専門教科・科目以外のものの添削指導の回数及び面接指導の単位時間数については、「1単位につき、それぞれ1回以上及び1単位時間以上を確保」した上で、各学校が適切に定めることとしています。

 全日制や定時制の課程においては、通常、1単位当たり、年間で35単位時間の授業があることを考えれば、通信制の課程において、実際に学校に登校し、先生から対面で指導を受ける回数はかなり少ないといえます。それだけに、それぞれの回数、単位時間数を十分確保することは極めて重要です。

◇面接指導時間数の免除

 高等学校学習指導要領では、各教科・科目の1単位当たりの添削指導の回数、面接指導の単位時間数が標準として示されていると述べましたが、実は、面接指導時間数については、ラジオやテレビ、インターネットなどを使った学習で、その時間を一部免除することも可能とされています。

 ここでは、この面接指導時間数の免除規定について説明をします。

 高等学校学習指導要領では、面接指導時間数を免除する条件として、「学校が、その指導計画に、各教科・科目又は特別活動について体系的に行われるラジオ放送、テレビ放送その他の多様なメディアを利用して行う学習を計画的かつ継続的に取り入れた場合で、生徒がこれらの方法により学習し、報告課題の作成等により、その成果が満足できると認められるとき」としています。

 すでに述べたように、通信制の課程の学習の量と質は全日制・定時制の課程の学習の量と質と同等であるとされているため、「生徒の面接指導等時間数を免除しようとする場合には、本来行われるべき学習の量と質を低下させることがないよう十分配慮しなければならない」ことが明記されています。

 それでは、実際にどのくらいの時間数が免除されるのかというと、高等学校学習指導要領では、「高等学校通信教育における面接指導の重要性を踏まえ、多様なメディアを利用して行う学習により面接指導時間数を免除することができるのは10分の6以内の時間数まで」としています。

 つまり、「体育」であれば、本来、1単位当たりの面接指導時間の標準は5単位時間ですが、学習の量と質を担保できるのであれば、対面による指導3時間分までを多様なメディアを利用して行う学習に置き換えてもよいということです。

 さらに、この免除規定では、「生徒の実態等を考慮し、特に必要がある場合であって、複数のメディアを利用する場合には、各メディアごとにそれぞれ10分の6以内の時間数を免除し、合わせて10分の8まで免除することができる」としています。

 そうすると、「体育」は、標準の5単位時間のうち4単位時間分を、複数メディアを利用した学習とし、対面による指導は1単位時間分だけでよいということになります。

 それでは、この免除規定を利用できる「生徒の実態等を考慮し、特に必要がある場合」とは、具体的にはどのような場合でしょうか?

 高等学校学習指導要領では、次のような例が示されています。

①病気や事故のため、入院又は自宅療養を必要とする場合

②いじめ、人間関係など心因的な事情により登校が困難である場合

③仕事に従事していたり、海外での生活時間が長かったりして、時間の調整が付かない場合

④実施校自らが生徒の実態等を踏まえ、複数のメディア教材を作成する等により教育効果が確保される場合

 ①については、入院等の事情により学校に来ようと思ってもそれが困難な場合は、全日制や定時制の課程の高等学校においても、遠隔授業を行ったり、補習を行ったりしているところもあります。通信制の課程の高等学校において、このような事情で登校ができない生徒については、この①により面接指導時間数を免除することができるというものです。

 ②については、文部科学省の調査などから、通信制の課程の高等学校に在籍している生徒のうち、中学校時代いじめや人間関係などから不登校を経験した生徒の割合は、全日制の課程の高等学校と比べてかなり高いことが分かっています。そのような課題を抱えた生徒が、高等学校に入学してもやはり登校が困難なままであることも多くあります。そのような生徒については、この②により面接指導時間数を免除することができるというものです。

 ③については、通信制の課程の高等学校に在籍している生徒の中には、すでに仕事に従事していたり、芸能活動やスポーツ選手として活躍したりしている生徒もいます。このような生徒は、学業と仕事・学校外での活動を何とか両立させようと努力していますが、どうしても日程調整がつかない時もあります。そのような生徒については、この③により面接指導時間数を免除することができるというものです。

 ④については、通信制の高等学校においては、ICT機器を活用して生徒に情報発信したり、生徒から質問・相談を受け付けたり、それへの回答を行ったりしている学校があります。また、実際の面接指導で使用する教材などを加工して、面接指導で聞きらした内容等がある場合にICT機器を利用して生徒が何度でも見直したり、復習したりできるように工夫している学校もあります。そのような学校においては、④にあるように複数のメディア教材を工夫することにより、面接指導時間数を免除することができるというものです。

 ただし、生徒の実態等を考慮して、面接指導等時間数を免除する場合にあっては、すでに述べたように、通信制の課程の学習の量と質は全日制・定時制の課程の学習の量と質と同等なため、「本来行われるべき学習の量と質を低下させることがないよう」、十分に配慮しなければなりません。

 また、このような多様なメディアを利用した学習は、時間と場所を選ばないという点で、本来の通信制の課程での学習イメージにも近く、非常に便利な方法ですが、利用にあたっては、「教職員や生徒等のプライバシー、教材等の著作権、情報のセキュリティ等に十分配慮すること」も必要です。

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