中学生のみなさんの中には、「通級による指導」を受けていて、高等学校でも同様の指導が受けられるのか不安に思っている人もいるかもしれません。
ここでは、広島県公立高等学校における通級による指導について説明します。
通級による指導は、通常の学級に在籍し、通常の学級での学習におおむね参加でき、⼀部特別な指導を必要とする児童⽣徒に対して、障害に応じた特別の指導を行う指導形態で、学校教育法施行規則第140条では、対象の障害種別として,言語障害,自閉症,情緒障害,弱視,難聴,学習障害,注意欠陥多動性障害,肢体不自由,病弱及び身体虚弱があげられています。
実施形態としては、通級指導担当教員がその学校に在籍する対象生徒を指導する「自校通級」と,対象生徒が在籍する高等学校に赴き指導する「巡回指導」、通級指導担当教員のいる学校に対象生徒が赴いて指導を受ける「他校通級」があります。

小・中学校では、1993(平成5)年度から、障害のある児童生徒が通常の学級に在籍しながら、必要に応じて特別な場(通級指導教室)で個別の支援を受けられる「通級による指導」が制度化されました。
そして、2018(平成30)年度からは、高等学校(中等教育学校後期課程を含む)においても、特別の教育課程を編成し、通級による指導を行うことが可能となり、小・中学校で受けていた支援を、高等学校でも継続して受けることができるようになりました。
高等学校での通級による指導は、選択教科・科目の一部を「通級による指導」に替えたり、放課後等の授業のない時間帯に「通級による指導」の時間を設定したりして行われ、年間7単位を超えない範囲で卒業認定単位に含めることができます。
2025(令和7)年7月に文部科学省が公表した「令和5年度 通級による指導実施状況調査結果」(以下、「調査結果」)によれば、通級による指導を受けている小中高の児童生徒数は全国で203,376人(在籍児童生徒数に占める割合は1.7%)、このうち、公立の高等学校において、通級による指導を受けている生徒数は全国で2,327人(在籍生徒数に占める割合は0.1%)となっています。
公立の中学校において、通級による指導を受けている児童生徒数が全国で34,393人(在籍生徒数に占める割合は1.2%)であるのに比べると、かなり数が少ないことから、高等学校で十分な指導を受けることができない生徒も潜在的に多くいるのではないかという指摘もされています。
この「調査結果」によれば、広島県では、通級による指導を受けている生徒数は、県立高等学校では3人、市立高等学校では15人、そして、通級による指導を受けている生徒が在籍する学校数は、県立高等学校は2校、市立高等学校は1校となっています。
県立・市立ともに「調査結果」では、学校名は記載されていませんが、広島市のHP(https://www.city.hiroshima.lg.jp/education/kyouiku-suishin/1026030/1008995.html)によると、市立高等学校で通級指導教室が設置されているのは、広島みらい創生高等学校だけとなっているため、市立高等学校の1校は広島みらい創生高等学校だと思われます。
したがって、「調査結果」の市立高等学校の15人の生徒は、広島みらい創生高等学校で、「自校通級」の形態で指導を受けていると推測されます。
県立高等学校については、学校名は教育委員会のHPなどでも記載されていないため、「調査結果」の3人がどの高等学校で、どのような形態で指導を受けているのかは分かりません。
また、2023(令和5)年度の広島県の公立高等学校の生徒数は43,534人(学校基本調査による)で、そのうち通級による指導を受けている生徒は18人ですから、その割合は0.04%(=18人÷43,534人×100%)となります。これは、全国平均の0.1%に比べても半分以下の水準であり、広島県の公立高等学校における通級による指導の実施率が、全国と比べてもかなり低いことが分かります。
広島県教育委員会は、通級による指導を行うかどうかの判断を次のように定めています。

これによると、まず,高等学校が,本人・保護者からの相談やチェックリストを使って学習面や生活面で困っている生徒を把握し(第1段階),分かりやすい授業を実施し,その生徒の授業での様子を観察していきます(第2段階)。その後、個別の指導計画等を活用した指導の工夫等の取組を行い(第3段階)、さらに校長が必要と判断し、生徒及び保護者が希望した場合,「通級による指導」を行う(第4段階)としています。
もしかしたら、こうした組織的・計画的な指導により、第3段階までの指導で、困りごとが軽減ないしは解消し、第4段階の通級による指導までは必要がないという生徒もいるため、実施率が全国平均よりも低くなっているのかもしれません。
いずれにしても、現在、中学校において「通級による指導」を受けている人で、公立高等学校への進学を考えている人は、進学先の高等学校で自分に合った支援が受けられるかどうか、学校選びの際にしっかり確認してみましょう。
不安があれば、担任の先生に相談して、学校や教育委員会へ問い合わせてもらえれば、確実な情報を入手することができると思います。
みなさんの進学後の高校生活が充実したものとなることを願っています!

※文部科学省「令和5年度 通級による指導実施状況調査」(令和7年7月16日公表)はこちらからどうぞ
※広島県立高等学校における「通級による指導」リーフレットはこちらからどうぞ
※広島市の「特別支援学級・通級指導教室の設置状況」はこちらからどうぞ
※「広島県公立高等学校入学者選抜における特別措置」はこちらからどうぞ
