中学生や高校生のみなさんは試験(テスト)が終わった後、どのようにしていますか?点数を見たらすぐに鞄の中にしまってしまい、先生が問題の解説をしているのを聞いていなかったりしていませんか?
答案用紙に書かれている点数は結果ですから、これ自体は変えようがありません。しかし、この経験から次の試験(テスト)に向けて今後どのような学習をしていくかで、次回の試験(テスト)の点数は大きく変わってくる可能性があります。
試験(テスト)に限らず、日ごろの勉強でも、「どうして間違えたのか」「次はどうすればよいか」など自分の学習のプロセスを振り返る活動は「教訓帰納」とよばれます。
このことについて、教育心理学者の植阪友里さんは、ある中学生の例を報告しています。
この中学生は成績が下がったので何とかしようと焦るのですが、たくさんの問題は解くものの、解きっぱなしで見直すことをしないという状態でした。
そこで植阪さんは、数学の問題を解いた後で必ず振り返り、「なぜミスをしたのか」「この問題のポイント何か」といった具体的な教訓や、「定義に立ち返って考える」「図や表を書いて考える」といった学習方法に関する教訓を引き出すよう指導をしました。
やがてこの中学生は数学以外の教科でも自主的に教訓帰納を行うようになり、試験(テスト)の成績にも成果が表れたということです。
教訓帰納における大切なポイントは次の4つです。
1 「勉強不足だった」「単純ミスが多かった」などの振り返りは全く意味がありません。「(理科、数学などで)いろいろな単位が混ざっている場合には、1つの単位にそろえてから考える」など具体的な振り返りでないと、次に生かせる教訓とはなりません。
2 中学生、高校生のみなさん自身が適切な教訓を引き出せるとは限りません。どのような教訓がよい教訓なのかを、先生から教えてもらうことも大切です。
3 教訓には問題自体に焦点をあてたものと学習方法に視点をあてたものがあります。教訓をできるだけ多くの場面に生かすには、「曖昧な言葉や難しい言葉は、教科書や辞書で確認しておく」など学習方法に関するものが効果的といえます。
4 失敗から教訓を引き出すことだけではなく、成功経験からも教訓を引き出す工夫も大切です。人間、失敗したことはあまり触れたくないので、よかった点に焦点を当てて、どうしたから結果がよかったのかとプラスの面に着目して考えてみるのも一つの方法です。
中学生や高校生のみなさんは、「経験から教訓を引き出す」ことができていますか?
そして、保護者や教員のみなさんは、我が子、生徒が「経験から教訓を引き出す」ことができるようどのように支援していますか?
◎主に参考とした本:佐藤浩一『学習支援のツボ 認知心理学者が教室で考えたこと』北大路書房 2014年
◎主に参考とした本:市川伸一『勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス』岩波ジュニア新書 2000年