「テスト前なのにやる気が出ない…」「机に向かっても集中が続かない…」中高生のみなさんの中に、そんな自分を「根性がない」とあきらめてしまっている人はいませんか?
実は、やる気は「気合」で出すものではなく、「仕組み」で動かすものです。認知心理学や教育工学の知見を使えば、誰でも自分のやる気をコントロールできるようになります。ここでは、自律的に学習を進めるための最強のフレームワークを紹介します。
1 自分の脳を動かす「4つのスイッチ」(ARCSモデル)
アメリカの教育工学者のJ.M.ケラーが提唱した「ARCS(アークス)モデル」は、学習意欲を4つの側面から分析するツールです。やる気が出ない時は、次の4つのスイッチのどこかが「OFF」になっています。
①Attention(注意)
チェック:「おもしろそう!」「なぜだろう?」と心が動いているか?
工夫:いきなり教科書を読まず、図解や写真などで「へぇ〜!」という好奇心を刺激する。
②Relevance(関連性)
チェック:「これは自分に関係がある」「将来の役に立つ」と思えているか?
工夫:将来の夢や日常のニュースと結び付けて、勉強を「自分ごと化」する。
③Confidence(自信)
チェック:「自分にもできそうだ」という「自己効力感」を持てているか?
工夫:難問は後回し。「少し頑張れば解ける」レベルから始める(スモールステップ)。
④Satisfaction(満足感)
チェック:「やってよかった!」「成長した」という実感が持てているか?
工夫:終わったらカレンダーに印をつけたり、「できたこと」をリスト化したりする。
2 勝ちパターンを作る「3つのステップ」(自己調整学習)
スイッチの入れ方が分かったら、次は学習を「仕組み化」します。アメリカの教育心理学者のB.J.ジマーマンは、学びを自分でコントロールする「自己調整学習」には次の3ステップが不可欠だとしています。
①予見:戦略的な計画を立てる
「何を、いつまでに、どうやるか」を決めます。ここで大切なのは、「ARCSモデル」のRelevance(関連性)とConfidence(自信)です。自分との関連性を意識しながら、「これならできそうだ」と思える無理のない計画を立てていきます。
②遂行:実行とセルフモニタリング
実際に学習を進めます。Attention(注意)を維持するために、スマホを別室に置くなどの環境調整も立派な学習能力です。「今、集中が切れてきたな」「この解き方は非効率だ」と、自分の状態を客観的に観察(セルフモニタリング)しつつ、必要に応じて計画の微調整を行っていきます。
③省察:冷静な振り返り
終わった後に「何ができて、何ができなかったか」を分析します。上手くいかない原因を「能力不足」ではなく、「学習方略(やり方)のミス)」と捉え、次回の「ステップ①予見」に生かすことが大切です。ここでのSatisfaction(満足感)が、次の学習への意欲へとつながります。
3 「やる気」を科学して、一生モノのスキルへ
中高生のみなさんが勉強でつまずく最大の原因は「やる気が出ない」という原因不明のモヤモヤ感です。しかし、ARCSモデルを使えば、その正体を具体的に分析できます。
・やる気が出ないのは「興味が持てないAttention(注意)」からか?
・「やる意味が分からないRelevance(関連性)」からか?
・それとも「難しすぎて自信がないConfidence(自信)」からか?
原因が分かれば、対処法も見えてきます。この「自己分析スキル」は、将来、大学での研究や仕事で高い壁にぶつかった時にもあなたを助けてくれる一生モノの武器(スキル)になります。
これからは、「気合」という不確かなものに振り回される必要はありません。この「仕組み」を使いこなし、しっかりと自分の進む道を切り拓いていきましょう。

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