「あー、今日の授業も終わった!」とノートを閉じるその瞬間。実はそこが、学力が伸びるかどうかの最大の分岐点です。
これからの時代に求められるのは、ただ教わるだけでなく、自分の学びを自分でコントロールする「自律した学習者」です。授業の終わりに、自分自身で「何を得たか」を振り返るたった数分間が、学びの質を大きく変えていきます。
ここでは、「振り返り」について、認知心理学の視点からその効果を説明していきます。
1 バラバラの知識を「ストーリー」に変える(精緻化)
社会科の人名や理科の公式、英単語などを呪文のように唱えて覚えようとしていませんか? 実は、そのような方法はあまり効率的ではありません。
もっと効果的なのは、授業の内容を「自分の言葉」でつなぎ直し、誰かにストーリーとして説明してみることです。認知心理学では、新しい知識を自分の知っていることと結びつけて、より深く理解することを「精緻化」と呼びます。
例えば、「この発明はなぜ生まれたのか」「この公式はどんなときに使えるのか」と自分で問いを立てながら、知識どうしを相互に関連付けてみましょう。そうすることで、バラバラだった知識は強固なネットワークでつながり、記憶に残りやすくなります。
精緻化された知識は、思い出しやすく、応用もしやすいというメリットがあります。このように、ただ覚えるのではなく、自分なりの「ストーリー」に変えて説明してみることで、理解が深まり、記憶も確かなものになっていきます。
2 「分かったつもり」を見つけ出す(モニタリング)
「よし、分かった!」と思っていても、いざ他人に説明しようとすると「あれ、ここはどういうことだっけ?」と詰まってしまうことはありませんか?
このように自分の理解の状態を確認し、理解できていない部分に気づくことを、「モニタリング」といいます。これは、自分の理解の状態を客観的に見つめ直す力のことで、「分かったつもり」を見抜くための大切なスキルです。
例えば、ペア学習中に、相手から「それってどういうこと?」と質問され、うまく答えられなかったとき。その瞬間に、自分は「分かったつもりだったけれど、実はよく分かっていなかった」と気づくことができます。
一人で考えているだけでは気づきにくいことも、友達とのやり取りを通して、あいまいな部分が明らかになります。モニタリングが働くことで、自分の理解の状態を正確に把握し、自信をもって学びを進める力につながっていきます。
3 次に使える「自分のルール」を残す(教訓帰納)
みなさんは試験(テスト)が終わった後、点数を見たらすぐに鞄の中にしまってしまい、先生が問題の解説をしているのを聞いていなかったりしていませんか?
勉強のあとに振り返りを行い、自分なりのルールやコツを見つけ出すことを、「教訓帰納」と呼びます。これは、経験から学びを引き出し、次に生かす力のことです。
例えば数学で、「三平方の定理を忘れてしまって解けなかった」と反省するだけでなく、「図を描いて三角形の形から公式をつくっていけば、思い出せなくても解けるかも」といった自分なりの攻略法をメモしておく。これが、教訓帰納です。
こうした「自分のルール(教訓)」を少しずつためていくことで、うっかりミスを防いだり、初めて見る応用問題にも落ち着いて対応できたりするようになります。「教訓帰納」を習慣化させることで、学びを“その場かぎり”で終わらせず、次につなげる力が育っていきます。
4 今日からできる「ペア学習リフレクション」
誰かに教えるつもりで学ぶ(または実際に教える)ことで、理解が劇的に深まることがあります。これを「プロテジェ効果」と呼びます。
説明しようとすると、脳は「どうやって伝えよう?」と考え、情報を整理したり、順番を考えたりします。こうした働きによって、自然と理解が深まり、記憶にも残りやすくなります。
では、どうすればこの効果を日々の学びに取り入れられるのでしょうか?
まずは授業の最後に、隣の人とこんなやり取りをしてみてはどうでしょう。
説明:「今日の内容、自分の言葉で説明してみるね」
質問:「今の説明で、どこか分かりにくいところあった?」
ルール化:「結局、次に似た問題が出たら、ここがポイントだよね」
この「自分への問いかけ」と「友達との対話」の積み重ねが、5年後、10年後のあなたを支える本物の知性となります。
5 おわりに:先生にお願いしてみよう!
授業の終わりは、ただの「終わり」ではなく、本当の学びの「始まり」です。
もし、授業がいつもチャイムぎりぎりまで続いて、振り返る時間がない時は…思い切って先生にこうお願いしてみてはどうでしょうか?
「授業の最後の5分間を、自分たちの振り返りに使わせてください!」
一人でいうのはちょっと恥ずかしいな…という場合は、友達と一緒にお願いしてみましょう。きっと先生も耳を傾けてくれるはずです。
その5分が、みなさんの学びの質を、そして未来を大きく変える第一歩になります。
参考
※精緻化については、「学習方法 1-5 効果的な学びを実現するための工夫(ラーニングピラミッド)」もご覧ください。
※モニタリングについては、「学習方法 1-3 自己学習力を支える知識(メタ認知)」もご覧ください。
※教訓帰納については、「学習方法 1-4 経験から教訓を引き出す(教訓帰納)」もご覧ください。
