令和6(2024)年12月、文部科学大臣から中央教育審議会に対し、「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」が諮問されました。これを受けて教育課程企画特別部会では、これからの社会にふさわしい学びの姿について議論が続けられ、令和7(2025)年9月25日に、その検討結果をまとめた「論点整理」が公表されました。
論点整理で示されたこれからの学びは、これまでのように「先生から教わる」ことを中心とした学びではなく、一人ひとりが自ら学びをデザインし、マネジメントしていく学びの姿です。
しかし、こうした議論は多くの場合「教える側」の視点で語られがちで、当事者である子どもたちに「これからどんな学びが始まるのか」が十分に伝わっていないように感じます。
そこで、ここでは、論点整理の内容をもとに、中高生のみなさんや保護者の方へ、これからの学びがどのように変わっていくのかを分かりやすく紹介していきます。
1 学びを「自分ごと」にする時代へ
論点整理では、これからの学びを示すキーワードとして「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)、多様性の包摂(Equity)、実現可能性の確保(Feasibility)の3つが示されています※1。これを学ぶ側の視点で読み解くと、次の3つの「自分ごと化」が見えてきます。
(1)「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence):「問い」を自分ごとにする
論点整理では、現行学習指導要領で掲げられた「主体的・対話的で深い学び」を、より確実に実現することが強調されています。
これからの授業では、「先生の問いに答える」だけではなく、「自ら問いを立てる」ことが学びの出発点となります。教科書の内容を覚えるだけでなく、「自分の疑問を言葉にする」「他者と考えをぶつけ合う」「納得できる答えをつくり出す」といった、自分の問いをもとに学びを深めていく姿勢が大切になっていきます。
(2)多様性の包括(Equity):「学び方」を自分ごとにする
論点整理では、「みんなの違いを大切にし、その違いを学びに生かすこと」が求められています。
人によって得意なことも興味も学ぶペースも異なるからこそ、自分に合った学び方を自分で選ぶ力が重要になります。「デジタル端末を使うのか」「本で調べるのか」「どこで学ぶのか」といった選択を自分で行い、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を自分たちでデザインする力が大切になっていきます。
(3)実現可能性の確保(Feasibility):「学びのプロセス」を自分ごとにする
論点整理では、ICTの効果的な活用も重要なテーマとして扱われています。
ICTなどのツールを「使わされる」のではなく、「自分の目的に合わせて使い分ける力」が重要になります。デジタルを活用することで生まれた時間を、どのように「深い学び」につなげていくか。そのためには、学びのプロセスそのものを自分でコントロールする力が大切になっていきます。
2 自分で学びを操作する
今回の議論で、東京大学大学院教育学研究科准教授の植阪友理委員が繰り返し強調しているのが、「学習方略(=学び方の工夫)」を自ら選び、活用していく力の重要性です。次期学習指導要領の改訂においては、「学習方略」は、みなさんが身に付けるべき力として、これまで以上に明確に位置づけられていきます※2。
その中心にあるのが「メタ認知」です。「自分はこの内容を本当に理解しているのか?」「この学び方は自分に合っているのか?」といった「自分を一段高い場所から客観的に見つめる力(=メタ認知)」が、学びの質を大きく左右します。
何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかを自分でチェックし(=メタ認知)、その気づきをもとに、必要であればやり方を修正しながら学びを進めていく力(=自己調整力)が、これからの学びの鍵になります。
3 未来へ向けた「学びの羅針盤」
論点整理の中心にあるのは、みなさんが「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる」自律した学習者(Autonomous Learner)として成長していくことです。
大切なのは、「何を教わったか」よりも「どう学んだか」。自分に合った学習方略を試行錯誤しながら、メタ認知の力を磨き続けること。そのプロセスこそが、これからの社会を生き抜くための確かな「羅針盤」となります。
これからの学校は、知識をただ「受け取る場」ではなく、みなさん自身が理論と実践の両面から「自分自身をアップデートしていく場」へと変わっていきます。
小学校では令和12(2030)年度、中学校では令和13(2031)年度、高等学校では令和14(2032)年度から新しい学びがはじまります。
みなさんは、2030年代の新しい学びをどのようにデザインし、どのようにマネジメントしていきますか?

(出典:文部科学省 初等中等教育分科会 教育課程部会 産業教育ワーキンググループ(第3回)配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/106/mext_00008.html)
※1 3つの語の原義⇒Excellence=質の高さ、Equity=公正さ、Feasibility=実現可能性
※2 「中央教育審議会初等中等教育分科会(第152回)配付資料」参照
参考
※教育課程企画特別部会「論点整理」(令和7年9月25日)
※「論点整理」については、要点をイラストやアイコン等も交えて分かりやすく整理したポイント資料も公表されています。(令和8年1月29日)
※メタ認知については、「学習方法 1-3 自己学習力を支える知識(メタ認知)」もご覧ください。
※植阪先生については、「学習方法 1-4 経験から教訓を引き出す(教訓帰納)」もご覧ください。
