入学者選抜において、志願者の数が定員を下回る「定員割れ」の状態になっているのに、全員が合格するわけではなく、不合格者が出ることがあります。これを「定員内不合格」といいます。
「定員割れなのに不合格になるって、どういうこと?」と不思議に思うかもしれませんが、実は毎年多くの高等学校で定員内不合格者が出ています。
ここでは、「定員内不合格」について、広島県と全国的な動きについてご紹介します。
1 広島県における「定員割れ」と「定員内不合格」の現状は?
令和7年度の広島県の公立高等学校入学者選抜では、一次選抜を実施した全日制の課程(本校)の高等学校84校142学科・コースのうち、半数以上にあたる55校91学科・コースで定員割れが起きました。これらの学校では、二次選抜が行われ、その募集の数は2,748人にも上っています。
その一方で「定員内不合格」も発生しています。文部科学省が2025(令和7)年12月26日に公表した「令和7年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」によると、広島県では延べ110人(28校)が定員内不合格となっており、そのうち、19人(7校)は二次選抜で不合格となっています。
2 全国的な動向は?
高等学校は義務教育ではないこともあり、文部科学省は長い間「高等学校の学習についていける見込みのない者をも入学させることは適当ではない」とした上で、「高等学校の入学者の選抜は、……高等学校教育を受けるに足る資質と能力を判定して行なう」とする、いわゆる「適格者主義」の考え方をとってきました※1。
しかし、進学率の高まりや高等学校に求められる社会的な役割の変化にともない、文部科学省はこの考え方を徐々に見直し、令和4年ごろからは「学ぶ意欲を有する生徒に対して、学びの場が確保されることは重要」との考え方を前面に出すようになってきました※2。
こうした変化のきっかけをつくったのが、れいわ新選組の舩後靖彦参議院議員による国会での質疑です。舩後議員は、2019(令和元)年から国会で繰り返し「定員内不合格」の問題を取り上げ、文部科学省に対して、安易に不合格を出さないよう指導することや、実態を把握するための調査を強く求めました。
これを受け、文部科学省は2022(令和4)年度から「高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査」を開始し、各自治体の定員内不合格の状況や取組内容を公表するようになりました。
3 最新の調査結果は?
「令和7年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」によると、全国の「定員内不合格」の状況は、次のとおりです。(括弧内は2024(令和6)年度のデータ)
・定員内不合格者の数(延べ数):1,770人(2,029人)
・定員内不合格者がいなかった自治体数: 10自治体(9自治体)
・定員内不合格があった学校数(実数):549校(549校)
定員内不合格があった学校数(実数)に変化はありませんが、定員内不合格者数は、前年度より1割以上減少し、定員内不合格者がいなかった自治体もわずかながら増加しています。
4 おわりに
「定員内不合格」について、文部科学省は「定員内でありながら不合格を出す場合には、各教育委員会等及び各校長の責任において、当該受検生に対し、その理由が丁寧に説明されることが適切」であるとしています※3。
このことは、単に「学力が不十分だから」といった理由で「不合格」とするのは適切ではなく、受検生の「学ぶ意欲」に照らして、なぜ学びの場を提供できないのかという理由を、本人が納得できるよう誠実に説明しなければならないことを意味しています。
また、文部科学省は「学ぶ意欲を有する中学生の進路先が確保されているかどうか」についても、教育委員会として状況を把握し、今後の施策につなげていくよう求めています※2。
ここには、学ぶ意欲のある生徒が学ぶ機会を失うことがないよう、各教育委員会が責任を持って状況を管理し、必要な対応を行うべきだという国の強いメッセージが込められています。
このような方針を受けて、各都道府県の入学者選抜の制度は、少しずつですが、着実に変化してきています。
みなさんの「学びたい」という気持ちは、何よりも大切な一歩です。その一歩を踏み出すみなさんの勇気を、心から応援しています。
※1 中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校教育部会(平成24年7月12日)配布資料「課題の整理と検討の視点(案)」
※2 文部科学省初等中等教育局参事官(高等学校担当)「令和4年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)の集計結果の公表について」(令和4年12月27日)
※3 文部科学省初等中等教育局長・文部科学省総合教育政策局長「高等学校入学者選抜等における配慮等について(通知)」(令和7年6月27日付 文科初第836号)
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