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1-4 学年制と単位制


 高等学校には、学年制の高等学校と単位制の高等学校があります。学年制は、学校がその学年で修得すべき科目・総単位数を決め、その決められた科目の単位を修得することで、上の学年に進級する制度のことです。したがって、その学年で決められた科目をすべて修得しゅうとくできなかった場合は、上の学年に進級できずに原級留置げんきゅうりゅうち(いわゆる「留年」)となり、場合によっては、修得できた科目も含め、その学年でのすべての科目をもう一度学習しなおさなければならないことも起こります。

 これに対して、単位制は、その年度に学習する科目・総単位数を自分で決めて学習し、卒業に必要な単位を積み上げていく制度のことです。学年制と違って、もしある科目の単位が修得できなかった場合でも、その科目だけを次年度に再び学習すればよく(もし、その科目が卒業要件として必須でない場合は、次年度に再び学習しなくても問題ありません)、修得できた科目をもう一度学習しなおす必要はありません。このように単位制には、学年制と違って、進級とか原級留置という概念がいねんがありません。

 一般的に、全日制の課程の高等学校の多くは学年制をとっていますが、総合学科では単位制をとっている場合もあります。これに対して、定時制・通信制の課程の高等学校では、学科に関係なくほとんどが単位制をとっています。

 進級や卒業について、学習指導要領では、「各学年における課程の修了の認定については、特定の学年において一部の単位の修得が不認定となった生徒について、一律に原級留置とするのではなく、弾力的だんりょくてきに運用することとし、学校が定めた卒業までに修得すべき単位数を、修業年限内に修得すれば卒業が可能になるよう配慮すること」を求めています。

 しかし、全日制の課程の場合は、通常、クラスは同年齢の生徒によって構成され、クラス単位で授業を受けることが多いため、もし前年度にある科目を修得できなかった生徒が、とりあえず進級し、修得できなかった科目の授業だけを、一つ下の学年で受けることになった場合、どこのクラスに入っても違和感いわかんが残ります。

 また、その修得できなかった科目の授業を受ける時には、その生徒は、進級したクラスで行われている授業を受けることができなくなります。そうすると、その生徒は次の年度にも同じことが生じ、結局、同級生と一緒に卒業できなくなってしまうことになります。全日制の課程で、単位制をとることが難しいのはこのあたりに原因があります。

 単位が取れなった生徒専用の時間割をつくることができれば、このようなことを避けることができるかもしれませんが、各校の教員数や教員の業務負担などを考えれば、それはほとんど不可能といえます。

 これにより、進級や卒業ができなくなった(あるいは年度途中で、できないことが判明した)生徒は、その学校での学習が続かなくなり、退学したり、転学したりすることになります。多くの場合、その転学先となるのが、通信制の課程の高等学校です。

 単位制をとる定時制・通信制の課程の高等学校では、働きながら学校に通っている人や若いころに高等学校に行けずに定年退職後に高等学校に入学してくる人もいるため、そもそもクラスが異年齢いねんれいの生徒から構成されています。また、学習する科目の順番も一部を除いて、自分で決めることができるため、ある生徒は2年次に学習した科目を、別の生徒は3年次に学習したりすることもあります。

 したがって、年齢が違う生徒が当該科目の授業クラスにいても、全日制の課程の高等学校のような違和感が生じることもなく、年齢が違う生徒が同じ授業クラスで学習するのは、むしろ当たり前といえます。そのような意味では、転学してくる生徒も、定時制や通信制の課程の高等学校では違和感なく学習を進めることができるといえます。

 学年制のシステムが同年齢集団を基本とするのに対して、単位制のシステムは異年齢集団を基本としています。卒業後に働くようになる会社や組織は、どう見ても異年齢集団です。高校生段階から、異年齢集団での経験を積めることは、社会に出たときに大いに役立つことと思います。定時制や通信制の課程の高等学校で学ぶことの魅力の一つともいえます。

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